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ブラシノステロイド(ぶらしのすてろいど)

ブラシノステロイドの一種、ブラシノライドの構造式

主として、成長の促進に関与する植物ホルモン。

細胞伸長・分裂促進、エチレン合成、発芽促進などを誘導する。 動物の性ホルモンに似た、ステロイド系の構造を持つ有機化合物を総称するもの。

他の植物ホルモンでは、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニンに近い作用を持ち、それらと協調的に働くことが知られている。

種子の発芽については、発芽を抑制するアブシジン酸と拮抗して作用している。

比較的新しく発見されたブラシノステロイドは、未だ解明されていない部分も多く、現在も農業分野で利用するべく研究が続けられている。

エチレン(えちれん)

エチレンの構造式

主として、植物の成長や老化に関与する、気体の植物ホルモン。

発芽促進、果実の成熟促進、球根の休眠打破、落葉促進、細胞の伸長・分裂抑制などを誘導する。 パイナップル(アナナス)科植物には、花芽分化を促進する効果もある。

ガス灯周りの街路樹だけが、他よりも早く落葉する現象から発見された物質で、タバコの煙、車や石油ストーブの廃ガスにも含まれている。 風の振動や、人による接触等、植物への物理的な刺激から発生することもある。

成熟した果物から生じることがあるので、熟させたくない植物には、エチレンが生じる果実を近づけないように注意する。 逆に、未熟な果物を追熟したい場合は、熟したものと一緒に保存しておくと良い。 リンゴは、エチレンガスを多く発生させる果物として知られる。

農業分野では、早生みかんの色づけや、未熟なバナナの成熟、伸長を抑えて太いもやしを育成するのに利用されている。

アブシジン酸(あぶしじんさん)

アブシジン酸の構造式

主として種子や芽の成長抑制、器官離脱(落葉・落果)、気孔閉鎖に作用する物質。

植物ホルモンの一種。

種子は通常時、種皮に含まれるアブシジン酸によって、胚の成長が抑えられ、休眠状態に置かれている。 しかし何らかの原因でアブシジン酸の生成が滞ると、樹上で未熟な種子が発芽してしまったりする。

植物に水分が不足した際には、蒸散を抑えるために気孔の閉鎖を促す。

水不足のような環境ストレスに反応して合成され、植物の抵抗力を増すアブシジン酸は、耐性誘導ホルモンとしても知られている。

他に環境ストレスによって合成されるホルモンには、エチレンやジャスモン酸がある。

ジャスモン酸(じゃすもんさん)

ジャスモン酸の構造式

ジャスモン酸は、元々ジャスミンの香りの主成分として発見された物質。

その後の研究の結果、主として成長の抑制に関与する、植物ホルモンとしての作用が確認された。

他には、果実の熟化、種子や芽の休眠打破、老化促進、落葉促進(離層形成促進)、塊茎形成などを誘導する。

また、外敵による摂食などで植物体が傷ついたり、病気や水分不足等の環境ストレスを受けると、植物体内に急激に増加して、抵抗力を増強する耐性誘導ホルモンとして働く。

ストレスにより生成される「ジャスモン酸エステル」には揮発性があり、気孔から外部に放出されると、他の個体に危険を知らせたり、害虫の天敵を誘引したりする。

同じく、環境ストレスによって生成される「エチレン」や「アブシジン酸」とは協調的だが、「ジベレリン」とは拮抗的に作用することが多い。

ジャスモン酸を利用した薬剤は、リンゴやブドウの着色促進に利用されている。

サイトカイニン(さいとかいにん)

天然サイトカイニン、ゼアチンの構造式

主として細胞分裂を促進し、組織を拡大させたり、分化させたりする物質の総称。

植物ホルモンの一種。

植物体内に存在するオーキシンとの相互作用によって、細胞を増殖させるが、その際オーキシン濃度が高いと芽が分化、低いと不定根が分化する。

サクラがよく罹るテングス病は、サイトカイニンが爆発的に増加して、異常な数の芽が分化するもの。 それらの芽が成長すると、一カ所から異常に枝が密生して、まるで鳥の巣かホウキのように見えることから、日本では天狗巣病、英語では魔女のほうき(witches’-broom)と名づけられた。 テングス病が発生したら、伝染しないように、枝を切り取って焼却処分すると良い。

サイトカイニンのその他の作用には、 気孔の開孔、老化の抑制、カルスの形成、側芽の成長促進、クロロフィル合成促進、発芽促進などがある。

バイオテクノロジーで組織培養する際に用いると、生じる器官を調整することができる。

農業分野では、果樹の枝を増やしたり、着果促進したり、果実を肥大させたりするのに利用されている。

ジベレリン(じべれりん)

ジベレリンA3 の構造式

植物の茎や根を伸長させる作用を持つ、植物ホルモンの一種。

その他にも、種子の休眠打破、開花・結実の促進、老化や落葉の抑制、果実の無種子化(単為結果)など、多くの作用がある。

元々は、稲が異常に成長してしまう馬鹿苗病の原因となるカビから発見された毒素で、そのカビの名前から、ジベレリンと名づけられた。 後に、同じ作用を持つ物質が植物体内から発見され、植物ホルモンとして知られることとなる。

植物のジベレリン合成を妨げると、茎や根の生育が悪くなり、通常より背丈の低い植物ができる。 この性質を利用して、矮性品種を作る際には、矮化剤として、ジベレリンを阻害する薬剤が使われる。

また、ジベレリンは、受粉しなくても子房を成長させる作用があるため、種子の無い果実を作ることができる。 タネ無しブドウを作る時は、開花の前後に、房をジベレリン水溶液に浸す。 これは、ジベレリン処理と呼ばれる。

オーキシン(おーきしん)

オーキシンの一種である3-インドール酢酸の構造式

細胞を伸長させ、植物の成長を促す作用を持った物質の総称。

植物ホルモンの一種。

園芸では、果実を着果させたり、実った果実の肥大や成熟を促すために、使用されることが多い。 また、挿し木等の栄養繁殖では、発根を促すのに用いられる。

植物を、異常に成長させることで、結果的に枯らしてしまう作用を持つオーキシンも存在しており、その作用から除草剤として利用されている。 これはアメリカ軍によって、ベトナム戦争時に枯葉剤として使用された。

植物の枝や茎の先端には、頂芽(ちょうが)と呼ばれる芽があり、そこからはオーキシンが分泌されている。 頂芽のオーキシンは、側面から出る側芽(そくが)の成長を抑制して、頂芽優勢の性質を保つ。

フロリゲン(ふろりげん)

植物ホルモンの一種で、植物の花芽形成を誘導する花成ホルモン。

70年前にロシアの植物学者によって、その存在が確認されたものの、誰も抽出に成功することなく、長い間正体不明のままだった。

幻のホルモンとも言われていたフロリゲンだったが、奈良先端科学技術大学院の島本教授らが、開花を促進する遺伝子Hd3aにより作られたタンパク質であることをつきとめた。 研究内容は2007年4月20日付の米科学誌「サイエンス」に発表されている。

稲に、この遺伝子を導入すると、開花までに要する期間を3分の1ほどに短縮できる。

フロリゲンが実用化されると、植物の開花をコントロールできるようになるため、園芸や農業分野における応用が期待されている。

・NAISTプレスリリース 「自在に花を咲かせる夢のホルモン(フロリゲン)を世界に先駆け発見!」

腋芽(えきが・わきめ)

枝の途中から出る腋芽

葉の付け根や、幹や茎の途中から出る芽のこと。

普段は、先端の頂芽(ちょうが)が分泌する植物ホルモンのオーキシンにより、生育が抑えられている。

摘心によって頂芽が切断されると、勢い良く成長をはじめる。

脇芽(わきめ)・側芽(そくが)ともいう。

⇔頂芽(ちょうが)

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脇芽(わきめ)

バラのわき芽

葉の付け根や、幹や茎の途中から出る芽のこと。

普段は、先端の頂芽(ちょうが)が分泌する植物ホルモンのオーキシンにより、生育が抑えられている。

摘心によって頂芽が切断されると、勢い良く成長をはじめる。

側芽(そくが)・腋芽(わきめ・えきが)ともいう。

⇔頂芽(ちょうが)

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側芽(そくが)

グアバの葉腋からでた側芽

葉の付け根や、幹や茎の途中から出る芽のこと。

普段は、先端の頂芽(ちょうが)が分泌する植物ホルモンのオーキシンにより、生育が抑えられている。

摘心によって頂芽が切断されると、勢い良く成長をはじめる。

脇芽(わきめ)・腋芽(わきめ・えきが)ともいう。

⇔頂芽(ちょうが)

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頂芽(ちょうが)

サクランボの頂芽

幹や茎の先端にある芽のこと。

葉の付け根や、幹の途中から出てくる側芽(そくが)よりも生育が旺盛である。

頂芽は、植物の成長を促す植物ホルモンのオーキシンを分泌しており、その物質がわき芽の成長を抑えている。

頂芽を摘むとオーキシンが減少して、側芽が勢い良く成長をはじめる。

このように、優先的に頂芽が成長する性質を、頂芽優勢(ちょうがゆうせい)という。

⇔側芽(そくが)・脇芽(わきめ)・腋芽(わきめ・えきが)

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植物ホルモン(しょくぶつほるもん)

リンゴの果実は、エチレンガスを発する

植物によって生産される、ごく微量で植物の生理機能に作用する有機化合物。

植物の成長や、器官の形成に大きな影響をおよぼす。

ホルモンによって植物の機能をコントロールできるため、合成されたホルモンは農薬として広く普及している。

例えば、ジベレリンは種の無い果実を作り、エチレンは果実の成熟を促進する。 オーキシンは、果実の結実を促進するほか、除草剤としても利用されている。

現在確認されている植物ホルモンには、ジベレリン、オーキシン、サイトカイニン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノステロイド、ジャスモン酸、フロリゲンがある。

フロリゲンについては、70年前に発見されて以来、花芽形成を誘導する花成ホルモンとして認識されていながら、その正体が分かっていなかったが、奈良先端科学技術大学院の島本教授らが発見、2007年4月20日付の米科学誌「サイエンス」に発表されている。

新しい植物ホルモンの科学 小柴 共一

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